
プロテクションフィルムとは、ボディの外側に貼ることで塗装を保護する高耐久フィルムです。ガラスコーティングの約150倍以上の厚みがあり、飛び石などの物理的ダメージに対して圧倒的な保護力を発揮します。また、耐紫外線性や防汚性にも優れており、美しい状態を長く保つことが可能です。
ただし、その効果を最大限に引き出すには、日頃のお手入れと定期的なメンテナンスが欠かせません。お手入れしようとしているものの「どのように洗えばいいのか、使ってはいけない洗剤はあるのか」といった疑問を感じている方もいるでしょう。
この記事では、プロテクションフィルムをきれいに保つための正しいお手入れ方法や注意点を詳しく解説します。
プロテクションフィルムには定期的なお手入れとメンテナンスが必要
プロテクションフィルムは、ガラスコーティングと同様に、定期的なお手入れと施工店でのメンテナンスが欠かせません。施工後に何もしないまま放置していると、黄ばみやくすみが生じたり、汚れがフィルム表面に固着して取れにくくなったりします。
また、フィルム表面のセルフヒーリング(自己修復)層が機能しにくくなり、細かい傷が残りやすくなることもあります。さらに、紫外線や雨水の影響によってエッジ部分の浮きやフィルムのひび割れといった症状が現れる可能性もゼロではありません。こうした劣化を防ぐには、日常的な洗車に加え、専用クリーナーやメンテナンス剤の使用、必要に応じた再施工が重要です。
プロテクションフィルムをお手入れするメリット
プロテクションフィルムをこまめにお手入れすることで、施工当初の状態をより長く維持しやすくなります。美観だけでなく、保護性能そのものにも影響が出てくるため、定期的なケアは非常に重要です。ここでは、日々のお手入れによって得られる具体的なメリットについて紹介していきます。
黄ばみ・くすみを予防して透明感をキープできる
プロテクションフィルムに発生する黄ばみやくすみは、主に紫外線や排気ガス、酸性雨に含まれる化学物質の影響によって起こります。特にポリウレタン素材のフィルムは紫外線に長時間さらされることで、樹脂が劣化しやすく、黄変の原因となります。
また、表面に付着した水垢や油分、微細な汚れが放置されると酸化が進み、くすんで透明感が損なわれます。こうした劣化を防ぐには、定期的な水洗いや中性シャンプーでの洗浄、必要に応じた専用クリーナーの使用が効果的です。表面を清潔に保つことで、光の透過性を維持し、フィルム本来の透明感を長く楽しめます。
セルフヒーリング(修復)機能を最大限に発揮できる
プロテクションフィルムの中には「セルフヒーリング機能」を備えた製品があり、表面にできた細かい傷を熱や日光によって自然に修復する性質があります。これはフィルム表面にある特殊なポリマー層が、一定の温度になると元の状態に戻ろうとする性質を利用したものです。
しかし、このセルフヒーリング層に汚れや油分、水垢が蓄積すると、熱が均等に伝わらず、修復機能がうまく働かなくなります。また、酸化やコーティング剤の成分が皮膜に残留すると、修復層そのものが劣化することもあります。定期的な洗浄や専用クリーナーによるお手入れを行うことで、セルフヒーリング機能を長期間安定して発揮させることが可能です。
撥水性や防汚性を長持ちさせられる
撥水性とは、水を強くはじくだけでなく、雨水と一緒に汚れも流れ落としやすくなることで、汚れの固着を防ぎます。たとえば軽い砂ぼこりや花粉が付着しても、雨が降ればある程度洗い流され、汚れがこびりつきにくくなります。
一方、防汚性はフィルム表面にある特殊コートが、油分や排気ガスなどの汚染物質をはじき、定着させにくくする性能です。これらの性能は放置していると徐々に低下しますが、定期的に正しいお手入れをしていれば、フィルム表面の状態が整い、日常的な洗車も短時間で済むようになります。
見た目の美しさ・艶を保ちやすくなる
プロテクションフィルムの美しさや艶は、表面の滑らかさと光の反射によって生まれます。しかし、汚れや水アカがたまってくると、フィルム表面に微細な凹凸ができて光が乱反射し、次第にくすんで見えるようになります。また、そうした汚れが酸化するとフィルムの表層が劣化し、本来の艶を取り戻しにくくなります。
日ごろから丁寧にお手入れをして、表面を清潔かつ滑らかな状態に保つことで、光の反射が均一になり、美しい艶が維持しやすくなります。定期的なケアは、見た目の劣化を防ぎ、仕上がりの質を長く保つためにも欠かせません。
フィルムの劣化・ひび割れを防いで寿命を延ばせる
プロテクションフィルムはポリウレタンやエラストマーといった柔軟な素材で構成されていますが、紫外線や酸性雨、排気ガスなどに長期間さらされることで化学的に分解が進み、硬化や変色が起こります。特にフィルムの端部や曲面は劣化の影響を受けやすく、収縮や内部ストレスによって微細なひび割れが生じることも珍しくありません。
こうしたダメージは見た目を損なうだけでなく、保護機能そのものの低下にもつながります。定期的なお手入れで汚れや有害物質を早期に除去し、表面を健全に保つことで、素材の劣化スピードを大きく抑えられます。その結果、フィルムの寿命を数年単位で延ばすことも十分可能です。
プロテクションフィルムのお手入れ方法
プロテクションフィルムのお手入れ方法は、ボディの汚れ具合によって使い分けることが大切です。ここでは、軽い汚れから雨染みのように頑固な汚れまで、状況に応じた具体的な洗浄方法と注意点について解説します。
軽度な汚れ:水洗い
ボディに砂埃や花粉などの軽い汚れが乗っている程度であれば、水洗いだけでも問題ありません。ボディの上から下へ向かって、やや強めの水をかけて汚れをしっかり洗い流すことがポイントです。フィルム表面に汚れが残ったまま拭き取ると、細かな擦り傷の原因になります。
十分に洗い流したあとは、柔らかいマイクロファイバークロスなどで水分をやさしく拭き取っていきます。クロスでボディを拭く際も上から下の順番で拭き取っていくことで、汚れを引きずるリスクを減らせます。
固着した汚れ:中性シャンプーでの洗車
砂埃と雨水が混ざって汚れが固着している場合は、中性シャンプーを使って優しくボディを洗うのがおすすめです。まずは水洗いのときと同様に、ボディの上から下に向かって強めの水をかけて汚れを流していきます。これにより、シャンプー時に異物を引きずって傷がつくのを防げます。
カーシャンプーの中には、酸性やアルカリ性のタイプもありますが、プロテクションフィルムには中性シャンプーを使用しましょう。優しく洗い終えたら、しっかり水で流し、拭き取りも上から下の順で丁寧に行うことが大切です。
固着した雨染み:専用クリーナー・除去剤の使用
シャンプーでも落ちないような頑固な雨染みや固着汚れは、強くこすって落とすのではなく、専用のクリーナーやシミ除去剤を使用するのがおすすめです。使用する際は、フィルムとの相性に注意が必要ですが、基本的には製品ごとの使用方法を守れば問題ありません。
ただし、汚れが落ちないからといって、指定された時間以上に放置すると、フィルムの変色や捲れにつながるおそれがあるため注意が必要です。専用クリーナーは一般的なコーティング車用のもので対応できますが、不安な場合は施工店に確認してから使用すると安心です。
プロテクションフィルムのお手入れで注意すべきこと
プロテクションフィルムをお手入れする際には、気をつけておきたいポイントがいくつかあります。適切な方法で洗浄しないと、かえってフィルムを傷めてしまう可能性もあります。ここでは、お手入れ時に注意すべき具体的なポイントについて解説します。
ワックスは使用しない
プロテクションフィルムの表面に一般的なワックスを使用すると、かえってフィルムの質感や機能を損なう可能性があります。ワックスに含まれる油分や添加剤がフィルム表層に残ると、曇りやムラが発生しやすくなるほか、セルフヒーリング機能が正常に働かなくなる場合もあります。
特に注意が必要なのは、研磨剤や溶剤を含む製品で、長期的に見るとフィルムの劣化を早めるリスクがあります。艶出しや保護を目的とするなら、各フィルムメーカーが出している専用品の使用が安心です。たとえばXPEL社の「XPEL Paint Protection Film Sealant」は、フィルム表面に適した保護層を形成する専用シーラントとして推奨されています。
高圧洗浄機を至近距離で噴射しない
高圧洗浄機は、水圧の力だけで汚れを効果的に洗い流せるため、プロテクションフィルムの洗車にもおすすめです。ただし、ノズルを至近距離から当てるのは避けましょう。フィルムの端部や繋ぎ目に高圧の水が集中すると、フィルムの浮きやめくれ、エッジ部分のめくれ上がりの原因になります。
また、あまりに近づけると、表面のコーティング層にダメージを与えることもあります。理想的な使用距離は30cm〜50cm程度です。ノズルは一定の距離を保ち、なるべく直角ではなく斜めに当てるよう意識すると、余計な圧が一点に集中せず安心です。フィルムの美観と性能を守るためにも、使い方には十分注意しましょう。
直射日光での洗車はできるだけ避ける
プロテクションフィルムの洗車は、できるだけ直射日光の下では行わないのが理想です。強い日差しの下では、ボディ表面が高温になりやすく、水分やシャンプー、クリーナー類がすぐに乾いてしまいます。これにより、水アカやシミが残ったり、薬剤成分がフィルム表面に固着してムラや変質の原因になることがあります。
洗車は曇りの日や朝夕の涼しい時間帯、あるいは屋根付きの場所で行うのがベストです。やむを得ず直射日光下で作業する場合は、洗浄やすすぎをパネルごとに分けて素早く進める、乾く前に拭き取る、ボディが熱を持ちすぎていないことを確認するなど心がけましょう。
プロテクションフィルム施工車の洗車機使用は基本的にNG
プロテクションフィルム施工車に洗車機を使用することについては、施工店によって見解が分かれますが、基本的におすすめしません。洗車機自体の性能が悪いわけではなく、ガソリンスタンドごとにブラシの手入れ頻度や管理状況が大きく異なるためです。
まったくメンテナンスされていないブラシが使われている場合、フィルム表面に無数の擦り傷が入るおそれがあります。また、近年の洗車機にはコーティング剤を自動で噴霧する機能がついており、前に使った車の溶剤が残留していた場合、それがフィルムに付着してシミになるリスクもあります。どうしても洗車機を使いたい場合は、ブラシが接触しないノンブラシタイプを選ぶようにしましょう。
プロテクションフィルム専用のコーティング施工もおすすめ
プロテクションフィルム施工店の中には、フィルム専用のコーティングメニューを用意しているお店もあります。こうした専用コーティングには、耐薬品性や耐紫外線性が備わっており、フィルムの黄ばみや劣化を抑える効果が期待できます。
さらに、撥水性が高まることで汚れが付きにくくなり、きれいな状態を維持しやすくなるだけでなく、日頃のお手入れもぐっと楽になります。ただし、一般的な自動車用コーティング剤をフィルムに使用すると、成分の影響で表面にシミやムラができたり、フィルム自体の劣化を招いたりするおそれがあるため注意が必要です。
施工店での定期的なメンテナンスも重要
ここまでプロテクションフィルムの日常的なお手入れ方法について解説してきましたが、定期的に施工店でメンテナンスを受けることも重要です。自分では落としきれない細部の汚れをきれいにしてもらえるのはもちろん、フィルムの浮きやめくれを補修してもらえたり、専用のコーティング処理を再施工してもらえたりします。
とくに、日頃のケアをこまめに行うのが難しい場合は、アフターケアに力を入れている施工店を選ぶことで、フィルムの美しさと保護性能を長く維持しやすくなります。
関連記事:プロテクションフィルムは施工業者選びが重要!後悔しないための判断基準と見積もりのコツ
プロテクションフィルムに関するよくある質問
ここまでプロテクションフィルムのお手入れ方法について解説してきましたが、きれいな状態を維持するうえでまだまだ気になることがあるという方もいるでしょう。ここでは、プロテクションフィルムに関する4つのよくある質問に答えていきます。
プロテクションフィルムの寿命は?
プロテクションフィルムの寿命は、一般的に3年〜10年程度とされており、使用環境やメンテナンスの有無によって大きく変わります。走行中の飛び石や紫外線、駐車環境の影響などが劣化を早める主な要因です。
ヘッドライトなど灯火類に貼るフィルムは、発熱や光の透過性が関係するため、3年〜5年程度が目安となります。また、フィルムの素材や厚み、施工の質、洗車頻度といった複数の要素も耐用年数に影響します。長く持たせたい場合は、定期的な点検と適切なお手入れが欠かせません。
関連記事:プロテクションフィルムの寿命はどれくらい?長持ちさせる秘訣もプロが伝授
プロテクションフィルムの糊残りはどうやったらとれる?
プロテクションフィルムの「糊残り」とは、剥がした際に接着剤が塗装面に残る現象です。適切な方法で剥がせば起こりにくいものの、劣化や施工不良などが原因で発生することもあります。
施工店に剥がしを依頼すれば、糊残りも含めてきれいに処理してもらえますが、DIYの場合は自分で除去が必要です。専用リムーバーやシリコンオフ剤を使って慎重に対応しましょう。強くこすったり長時間放置するのは塗装を傷める可能性があるため注意が必要です。
プロテクションフィルム施工車にコンパウンドは使用して大丈夫?
プロテクションフィルムにコンパウンドは使用しないようにしましょう。コンパウンドは塗装の研磨を目的としており、フィルム表面に使用すると透明感が失われたり、セルフヒーリング機能が無効になったりするおそれがあります。場合によっては、フィルム自体に傷や曇りが残り、元に戻らなくなることもあります。
どうしても細かい傷が気になる場合は、まず専用のクリーナーで汚れを除去し、それでも改善しないときは施工店に相談しましょう。無理に自己流で対応せず、プロの判断を仰ぐことでフィルムの美観と機能を保つことができます。
洗車のペースはどれくらいがおすすめ?
プロテクションフィルムは厚みがあり耐久性も高いため、多少洗車の間隔が空いてもすぐに塗装へ影響が出ることはありません。ただし、フィルムの劣化を防ぐには定期的な洗車が重要です。理想は2週間に1回、少なくとも月に1回が目安です。毎日乗る方や屋外駐車の車は2週間に1度、あまり乗らず屋内駐車の場合は月1回でも十分です。ボディの汚れ具合を見ながら、無理のないタイミングでお手入れを行いましょう。
正しくお手入れしてプロテクションフィルムをきれいな状態で保とう
プロテクションフィルムは、飛び石や紫外線から塗装を守る高い保護性能を備えていますが、美しい状態を保ち、寿命を延ばすためには日頃のお手入れが欠かせません。軽い汚れは水洗いで、固着した汚れは中性シャンプーでやさしく洗い、洗車でも落ちないシミは専用クリーナーで対応しましょう。
また、定期的に施工店でのメンテナンスを受けることで、フィルムの浮きや劣化も早期に対処できます。こまめなお手入れを続けることで、プロテクションフィルム本来の美しさと保護性能を長く維持できます。

著者情報
株式会社カービューティーアイアイシー
代表取締役社長 舊役 哲史
2008年にガラスコーティング専門店の株式会社カービューテイーアイアイシーに入社
現在まで2,000台以上のカーコーティング,ガラスコーティングの施工実績を持ち、特に輸入車などの施工実績が豊富である。カーコーティングのオプション作業としてホイールコーティングの実績も豊富で様々な知識と技術力を有す。